今回は、意外に女性でも悩んでいる方が多い「痔」についてです。
「排便のあと、拭き取ったティッシュに真っ赤な血がついていて怖い」
「痔らしい痛みがあるけれど、恥ずかしくて病院に行けない」
こんなことにお悩みの方がいらしたら、落ち込まずに最後までお付き合いください。
病院に行くべき痔と、自分で改善対策や予防ができるかもしれない痔がありますので、まずは自分がどちらのタイプなのかな?ということを確認していきましょう。
目次
1、痔には3つの種類がある

①いぼ痔
痔になる人の50%がいぼ痔と言われています。イメージとしては「いぼ」のようなできものが肛門の内側にできるか、外側にできるか、というものです。
いぼ痔をつくらない、悪化させないためには、「いきむ」行為をすぐにやめることが大切!!
いぼ痔は、肛門周囲の血管のうっ血によって起こるので、血流障害につながることをやめることが何よりの改善・予防策です。
・内痔核
肛門の内側にできるいぼ痔のことです。
排便をしたときに、拭き取ったトイレットペーパーに血がついていたり、便器の中にポタポタと出血した後を見て気づく方が多いです。
・外痔核
肛門の外側にできるいぼ痔のことです。
内痔核と異なる点は、痛みを伴うということ。出血をすることもあります。
②きれ痔
肛門の皮膚が切れることによる痔です。
裂傷と同じなので、排便時や拭き取り時に強い痛みを伴うのと、出血もあります。
便秘や硬い便により、排便困難時に肛門の皮膚を切ってしまうことが原因なので、柔らかいお通じになるよう心がけてあげることが、何よりの解決策です。
③痔ろう
肛門周囲の皮膚の内側で、細菌感染を起こし膿が溜まっていることを意味します。
これはもう、すぐに医療機関にかかるべき状況で、それどころか日常生活が送れない方がほとんどではないでしょうか。
発熱と強い痛みを伴うので、椅子に座ることすらできない、という患者さんがほとんどでした。
抗生剤を投与され、膿の部分を切開・洗浄する外科的処置をするケースが多いです。
カルテ上の診断名は「肛門周囲膿瘍」と言われることになります。
2、痔になってしまう原因とは?
主に、生活習慣と食生活が関係してきます。
①便秘や硬い便
いきむことで、肛門周囲の血管がうっ血すると、うっ血を回避しようとしていぼが形成されやすくなります。
いきむ原因は何か、というと便秘を無理に解消しようといきんだり、なかなか降りてこない硬い便を無理に出そうとしたりすることです。
便意を感じるまで、無理にいきまないこと。
もし、コロコロお通じが途中で途切れてしまい、残便感があったとしていきまずに次の便意を感じるタイミングまで待ってあげてください。
この時、気をつけなければいけないことは、残便をさらに硬くしないことです。
便が腸にとどまる時間が長ければ長いほど、水分を吸収されてしまい、硬い便になってしまいます。
硬い便は、柔軟性がないために肛門の裂傷、つまりきれ痔の直接的原因になってしまうのです。
何よりも、便秘をしないこと、柔らかいお通じになるような食生活の改善が根本解決策となります。
②下痢
下痢も、痔を悪化させる要因を持っています。
感染症にかかった時などの激しい下痢が刺激となって、うっ血に繋がることも考えられますし、何度も拭き取り作業を繰り返すことによって、それが刺激となることもあります。
また、外痔核や痔ろうなど、肛門の外側にできている痔を不潔にすることも症状悪化につながります。
下痢をして肛門周囲が汚染されたままにならないように、ウォシュレットなどで優しく洗浄し、その後は刺激とならないように優しく上からペーパーで抑える形で清潔を保つことが大切です。
③体重増加
体重が増加した状態で、常に座りっぱなしの生活になると、その体重が長時間肛門周囲に圧迫をかけ、血流不全を起こすことにつながります。
それが原因で、いぼ痔や痔ろうの悪化につながりますので、肥満の解消や、血流不全を解消するためにも適度に体を動かすことが重要です。
④妊娠・出産
女性特有の要因があるならば、妊娠・出産の時です。
妊娠期、お腹が大きくなるにつれて、血流が腹部に多く使われるので、肛門周囲の血流が低下します。
また、出産時に長時間いきむことがあると、その間にいぼ痔ができやすく、産後に痔を自覚する方も多いとのこと。
このケースは致し方ない面もあるので、その後の改善策・改善後の予防策が必要となります。
3、痔を予防・改善していくための対処法
痔は、日常生活が大きく絡み発生するケースが多いことがわかりました。
改めて、痔を予防したり、改善していくための対処法をおさらいしていきましょう!
①便秘をしない
これは、受講生さんの変化を伺っていると最も効果が高いように感じます。
・水分摂取を心がける
硬いお通じになると、便秘の原因にもなるし、排便のしづらさが痔の形成・悪化につながります。
大人であれば、最低でも1日1200mlの水分摂取はしたほうがいいでしょう。
水分の過不足は、翌日の便で確認しやすいです。
翌日の便が硬ければ、水分不足。柔らかくで排便しやすければ、水分量が十分だった、というバロメーターになります。
・食物繊維をとる
お通じの材料になるのと、食物繊維がしっかり水分を吸収してくれることで、柔らかいお通じになります。
1日3食、しっかり野菜メニューが入っているかを確認してみてください。
・油をとる
油は、粘液の材料にもなります。粘液が十分に分泌される環境を作ってあげることで、スムーズな排便につながりやすくなります。肛門の保護にもなるので、症状の悪化防止にもつながりそうですね。
②排便の仕方に気を付ける
いきまない。これが鉄則です。
便意を感じ取ったときが排便のタイミングです。逆に、便意がないのに無理に出そうとすることは、肛門周囲の血管のうっ血につながり、痔の形成を助長させることになります。
子供のトイレトレーニングにおいて、「毎朝決まった時間にトイレに座らせましょう」とか「お通じをしてから学校に行かせましょう」などの冊子を目にすることがありますが、おすすめしません。
ライフスタイルや精神状況は日々変わります。
それによって排便状況が毎日変わっても何もおかしいことがありませんから、便意を感じたら学校でも外出先でも堂々と排便をすることの大切さを教えてあげてください。
③丁寧に肛門周囲のケアをする
不潔にしないこと、摩擦をしないことが大切です。
繰り返す下痢の時などは、しっかり洗って便の付着を落とし、刺激とならないように優しく丁寧に拭き取りのケアをしてあげてください。
④体重コントロール
私が看護師をしていた頃、肛門周囲膿瘍で外科的処置目的で入院をしていた患者さんの多くは、肥満体型でした。
逸脱した体型は、何かしら問題につながりやすいと考えるべきでしょう。
体重はすぐには落ちないので、肛門周囲に強い圧力をかけすぎない工夫を日常生活でしてあげることが大切ですね。
⑤運動をする
特にデスクワークの多い人や、体型が大きな人は意識をしましょう。
目的は、肛門周囲の血流改善です。
座りっぱなしの体制から、数分立ち上がってあげるだけでもいいので、2時間に1回は体を動かすことをしてみてください。
まとめ
できてしまった痔も、ちょっとの工夫で悪化を防げるかもしれませんし、予防にもつながる可能性があります。
とはいえ、症状に不安のある方や、悪化傾向を感じる時は、早めに医療機関を受診してください。
女性の場合は、部位的に恥ずかしさも感じるかもしれませんが、医療は皆さんの体をみるプロです。安心して早めの対応に繋げていってください。